夫婦喧嘩で暴力があったらどうすべきか?【弁護士が事例で解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA



夫婦の間であっても暴力は離婚原因となる可能性があります。

離婚すべきか否か、どう対処すべきかは状況によって異なりますが、冷静に判断すべきです。

当事務所の離婚事件チームには、DVやモラハラについて、多くのご相談が寄せられています。

以下、実際の解決事例をもとに、解説しますので、ご参考にされてください。



夫婦喧嘩中にお互いに暴力があったWさんの事例

ご相談者Wさん (福岡市)
30代男性
職業:公務員
世帯年収:800万円
婚姻期間:約5年
解決までの期間:10ヶ月
解決方法:協議離婚
子どもあり (あり)
離婚を切り出した

相手:30代公務員

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 減額利益
離婚 不成立 成立 成立
親権
養育費 5万円支払う 4万円支払う 月額1万円の減額
面会交流
財産分与 230万円 225万円 5万円の減額
慰謝料 680万円支払う 同上 同上
年金分割 50% 50%
婚姻費用 7万円 0円 合計70万円の減額 (10か月分)

状況

Wさんは、平成24年に妻と結婚をしました。

しかしながら、Wさんと妻の夫婦仲は悪く、2人は結婚後何度も夫婦喧嘩を繰り返していました。

Wさんや妻は、お互いに「死ね」等の暴言を吐き合い、Wさんが妻に物を投げつける一方で、妻はWさんを包丁で脅すなど、夫婦喧嘩の程度は非常に激しいものでした。

また、夫婦喧嘩の中で離婚の話が出ることも少なくなく、Wさんは過去に2度ほど妻から離婚届を手渡されたことがありました。

そのような中で、Wさんは妻との離婚を考えるようになりましたが、妻が里帰り出産をしていたこともあり、なかなか離婚の話を切り出せずにいました。

また、Wさんは、子どもが生まれたばかりの状況で離婚を切り出せば必ず大きな夫婦喧嘩になり、感情的になった妻に今度こそ包丁で刺されるのではないかとの恐怖がありました。

そのため、Wさんは、離婚について自身で協議をするのではなく、弁護士を代理人に立てようと考え、弊所の離婚弁護士にご依頼をされました。

 

弁護士の関わり

弁護士は妻に対し協議離婚申入書を送付しました。

また、本事例において、Wさんと妻が直接接触をすることは危険であると思われたため、協議離婚申入書において、妻に対しWさんに接触をしないよう予め伝えました。

協議離婚申入れを受けて、妻は、離婚はしたくないが、Wさんがどうしても離婚をしたいなら妻の要求を受け入れてもらう旨の主張をしていました。

しかしながら、妻は弁護士に対し書面で回答をしていたところ、記載されてある要求内容が明確ではなく、妻の要求が具体的にどのようなものであるのかが明確ではありませんでした。

そこで、弁護士は妻に対し、請求内容を確定するためにも口頭での交渉ができないかを打診しました。

妻は、当初は口頭での交渉に難色を示していたものの、弁護士の説得を受けて最終的には口頭での交渉に応じてくれるようになりました。

口頭での交渉を進めるにつれ、妻側の要求が明確にはなってきましたが、妻はペットの養育費を請求する等の無茶な要求もしていました。

そこで、弁護士は、子どもが生まれたばかりということもありWさんも一定の範囲で妻の要求を受け入れる意思はあるが、あまりにも無茶な要求をされる場合には調停手続きに移行せざるを得ない旨伝え、なんとか裁判基準に近い条件で離婚ができるよう妻の説得を続けました。

その結果、養育費については裁判基準に従い算出され、財産分与については裁判基準よりも少し妻に有利な形で解決をすることになりました。

他方で、本来Wさんが妻に対し支払わなければいけない未払婚姻費用70万円については、全く支払うことなく解決をすることができました。

 

補足

本事例では、Wさんと妻は、婚姻当初から夫婦の共通口座をつくり、お互い共同生活をする上で必要最低限の金額を毎月共通口座に入れる他は、それぞれが自己の給与を管理しているという状況でした。

このような場合、法的には、夫婦どちらの名義であるかを問わず、双方の財産が財産分与の対象になる可能性がありましたが、双方の共通認識として夫婦の共通口座以外はそれぞれ自己の物との認識をもっていたため、財産分与にあたり双方の財産を全て開示するということはしませんでした。

また、Wさん夫婦は自宅を購入していましたが、自宅についてはローンごと妻が引き取る形で合意をすることができ、財産分与問題を解決するにあたり比較的時間はかかりませんでした。

一般的には双方財産開示をした上で財産分与をすることになりますが、本事例のように、財産開示をすることなく財産分与問題を解決できるケースも少なくありません。

事案に即した適切な解決をするために、離婚問題に直面されている方は是非一度弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。

 

 

夫婦喧嘩で警察に相談できる?

夫婦喧嘩の場合、警察などに通報せずに、当事者だけで解決すべきという意識の方が多くいらっしゃいます。

確かに、家庭の問題なので、犯罪捜査を主目的とする警察に相談するというのは場違いにも感じられるでしょう。

しかし、近年、夫婦喧嘩がエスカレートして、傷害や殺人などの犯罪に発展するケースが多発しています。このような社会状況を背景として、夫婦喧嘩でも暴力を伴うような事案では、警察が積極的に動いてくれるようになっています。

例えば、怪我を伴うような暴力や、強度の精神的暴力については、警察への相談を検討してもよいでしょう。

 

子供の前で夫婦喧嘩や暴力があったら

暴力の対象が配偶者であって、子供に暴力を奮っていなかったとしても、その場面を子供が見ていれば、子供に対する暴力と同視できます。

自分の親が他方の親から暴力を受けている様子は、子供にとって、自分への暴力と同じくらいつらく、悲しいものだからです。

DVが日常的にある家庭で育った子供は、幼少期のつらい思い出から、人格形成等に悪影響が生じるおそれもあります。

そのため、子供の前の暴力は、いかなる理由があっても、絶対に許されません。

そのような事案では、一刻も早く、警察や専門家へ相談するなどして対応を検討すべきです。

夫婦喧嘩での禁句

ある程度の夫婦喧嘩は、普段仲がよい普通の家庭でも、見られるもので、それ自体が大きな問題とはいえません。

「喧嘩するほど仲がよい」ということわざもあるくらいです。

しかし、ただの夫婦喧嘩を通り越して、離婚問題に発展しかねないような、許されない発言(禁句)があります。

当事務所には、多くの離婚のご相談が寄せられていますが、その中から、夫婦喧嘩での禁句をご紹介します。

離婚を明示するもの

「離婚したい。」
「出ていってほしい。」

上記のような発言は、離婚や婚姻関係の終結を示すものであり、相手方にも離婚を決意させる要因となりえます。

相手の人格を攻撃するもの

「無能」
「稼げない」
「何もできない」

上記のような発言は、言われた相手は深く傷つきます。特に、人前での発言は離婚を決意させる要因となりえます。

信頼関係を破壊するもの

「他の異性と交際している」
「犯罪を行っている」

不貞行為や違法行為を正当化するような発言は、相手の信頼を失わせるものであり、離婚を決意させる要因となりえます。

 

まとめ

夫婦喧嘩の中で暴力や暴言があった場合に、どのような対応方法を取るべきかは、当該暴力の内容や当事者の方の置かれた環境で異なります。

緊急性が高い場合は警察にすぐに相談すべきですが、相談すべきか否かについても、DV被害者の方は適切に判断できない可能性があります。

そのため、DVやモラハラに精通した専門家のサポートを受けて進めていかれることをおすすめしています。

当事務所の離婚事件チームは、DVやモラハラ問題を強力にサポートしています。

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