夫へモラハラ行為を繰り返すうつ病の妻と協議で離婚できた事例

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

ご相談者Oさん (福岡市西区)
50代男性
職業:会社員
世帯年収:600万円
婚姻期間:17年
解決までの期間:6カ月
解決方法:協議離婚
子どもなし
離婚を切り出した

相手:40代専業主婦

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 利益
離婚 不成立 成立 成立
財産分与
慰謝料 0円 自宅+50万円 自宅+50万円獲得
婚姻費用 月額9万円 月額6万円 月額3万円の減額

状況

Oさんは、平成13年に妻と結婚し夫婦2人の生活を送っていました。

しかしながら、妻は婚姻当初からOさんへの当たりが厳しく、Oさんを長時間叱責したり、皆がOさんを精神的な病気であると思っている等と言ったりして日々Oさんを精神的に追い詰めていきました。

その結果、Oさんは、手の振るえや動悸、過呼吸等のパニック症状が起きるようになり、救急車で運ばれたこともありました。

さらに、妻自身も不眠等の影響でうつ病になり、それに伴いOさんに対する暴言は日々エスカレートしていきました。

妻は不眠症の薬に依存し、またOさんは連日パニック症状が出るようになったことから、Oさんはこのままでは夫婦共倒れになると考え、妻との離婚を決意しました。

また、Oさんは妻に対する恐怖心から、妻と直接離婚協議をすることができず、同居していた自宅を出て行き別居を開始した上で、弊所の離婚専門弁護士に妻との離婚協議を依頼されました。

 

 

弁護士の関わり

まず、弁護士は妻に対し通知書を送りました。

その内容は、Oさんの病状、Oさんが妻との離婚を考えていること、離婚協議については窓口を全て弁護士としOさんには連絡をしないこと等です。

当初妻は、離婚をしたら自身の生活が成り立たないことを理由にOさんとの離婚を拒んでいました。

また、通知書を無視して、弁護士ではなくOさんに直接電話をかけたこともありました。

しかしながら、弁護士から妻に対し、Oさんの離婚意思が非常に固いことを伝え続け、Oさんには妻からの電話には出ないようにしていただいたため、妻は少しずつ離婚を前向きに検討する姿勢を見せ始めました。

離婚についての具体的な協議においては、妻がうつ病に罹患していたこともあり、コミュニケーションが円滑にいかない部分がありました。

そのため、弁護士は、①妻にも気持ちや状況を整理する時間を与えること、②電話や書面を使い分け少しでも妻が理解しやすい説明をすること、②出来る限り早い段階で妻の要求を全て提示させることを重視して協議を行いました。

また、本事例において、妻が自ら自宅を明け渡してくれなければ紛争の長期化は避けられなかったため、ある程度妻の要求を受け入れてでも協議で離婚を成立させる必要がありました。

そのため、協議途中で妻が交通事故を起こす等のハプニングもありましたが、保険関係等でOさん側で協力できることには誠実に協力し、他方でずるずると妻の要求を受け入れることにならないよう厳しく対応する部分とのめりはりをつけ、妻と粘り強く交渉を続けていきました。

その結果、妻は、任意に自宅を明け渡し、調停等の法的手続きに移行することなく協議での離婚を成立させることができました。

 

 

補足

本件のメインの争点について解説します。

離婚について

裁判所が離婚を認めるのは5つの場合に限定されています。

すなわち、①相手方の不貞行為、②悪意の遺棄、③3年以上生死不明、④回復の見込みのない精神病、⑤婚姻を継続し難い重大な事由の5つです。

本事例において、妻からOさんへのモラハラ行為があり、⑤婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性もありましたが、モラハラの程度や証拠等から、本事例ではモラハラの一事をもって離婚を認めてもらえる状況ではありませんでした。

そのため、Oさんが訴訟において離婚を認めてもらうためには、長期間の別居期間を要すると考えられました。

また、Oさんや妻の病状等に鑑みると、紛争の長期化は双方にとって多大なる負担になり、双方にとって協議にて早期に解決をすることが望ましい事例でした。

他方で、離婚に前向きでない妻に気持ちや離婚後の環境を整えてもらう等、早期の解決を目指しつつも、感情的な対立で協議が決裂することがないよう慎重に交渉を進めていきました。

その結果、本事例では訴訟や調停等の裁判手続きを利用せず、別居・ご依頼から約半年後に協議において離婚を成立させることができました。

財産分与について

財産分与とは、夫婦が婚姻期間に築いた財産を半分にするという制度です。

財産分与対象財産は、夫婦どちらの名義であるかを問いませんし、預金や不動産のみに限らず、将来もらう予定の退職金や保険の解約返戻金等も含まれます。

もっとも、協議においては、必ずしも夫婦の財産全てを2分の1に分けなければならないというわけではありません。

一方が他方より多くの財産を取得したり、双方の財産を明らかにせず各自自己名義の財産を取得したりする等、当事者の協議によって柔軟に財産分与を行うことが可能です。

本事例でも、Oさんや妻の財産を全て明らかにして2分の1にするという形式をとらず、妻が望む自動車等は妻が取得することとし、自宅はOさんが取得するという形での財産分与が成立しています。

なお、夫婦の共有財産は半分に分けるのが原則であることから、夫婦の一方がしっかり財産分与を行いたいと主張すれば、双方財産を明らかにした上で、それを2分の1にするという方法をとる必要があります。

ただ、その場合でも、何が夫婦の共有財産にあたるのか、相手方が財産隠しをしている、不動産をどのように分けるのか、といった複雑な問題が生じる可能性もありますので、財産分与に悩まれた際は早めに弁護士に相談することをお勧めします。

財産分与について、詳しくはこちらをご覧下さい。