モラハラとは?【特徴と対応方法を離婚弁護士が徹底解説】
モラハラとは、モラル・ハラスメントの略であり、精神的暴力、わかりやすく言えば、言葉や態度による「嫌がらせ」のことです。
「配偶者の言動はモラハラに該当しますか?」
「配偶者のモラハラを止めさせる方法はありませんか?」
「モラハラを理由に離婚できますか?」
当事務所の離婚事件チームには、このようなモラハラに関することついて、多くのご相談が寄せられています。
モラハラ被害には、共通した傾向が見受けられます。
モラハラの問題点と対応方法について、モラハラに精通した弁護士が解説いたします。
モラハラとは
モラハラとは、精神的暴力、分かりやすく言えば、「嫌がらせ」のことであり、殴る、蹴る等の身体的暴力と比べると分かりにくいものです。
モラハラについて、理解がない人は、殴ったりされないだけマシだ、と思うでしょう。
しかし、モラハラは、「目に見えない暴力」であり、被害者の心を少しずつ、そして確実に蝕んでいきます。
日本では、最近になって、このモラハラが注目されるようになってきました。そして、凶悪な加害者が引き起こす巧妙な「暴力」であることが理解され始めています。
例えば、あなたは、これまで誰かに「お前は価値のない人間だ。」などと人格を否定されたり、「何をやってもダメな奴だ。」などと侮辱しきった態度で接したりされたことはありませんか?
そんなことを言われたら、とても傷つきますよね。それがモラハラです。
そして、モラハラがエスカレートすると、「言うとおりにしなければ、お前をめちゃくちゃにしてやる。」などと脅迫とされるようになります。
そんなことをされるのが怖いため、被害者は何をするにも相手の顔色をうかがい、何でも相手の思い通りに行動してしまう、このようにして、相手に行動を支配されるようになるのです。
夫婦間のモラハラの特徴
モラハラの被害に遭うのは、ほとんどは結婚した後です。
結婚前、加害者は、親切な人物を装って被害者に接しています。
モラハラ加害者の多くは、頭がよく、巧妙な手口で、被害者の心を惹き付けます。
ところが、結婚し、相手を自分の支配下における状況になると、モラハラ加害者は豹変します。
それは、被害者が結婚のため会社を退職したとき、妊娠したとき、出産したときなど、心理的にも経済的にも加害者から離れがたくなった時期に多く見られます。
加害者は、些細な事で、突然、怒りだして、被害者を執拗に責め立てるようになります。
そして、「あんまり怒らせるな!」「次やったら承知しないぞ!」などといった言葉を繰り返し、すべて被害者の責任であることを言葉巧みに述べて、被害者に劣等感を植え付けます。
モラハラ加害者のイライラは決して消えることはありません。
例えば、被害者が掃除をしようと、「掃除機を使っていい?」と聞けば、加害者は「そんなこと聞かなくてもいいだろ!」と怒ります。
黙って掃除機をかければ、「せっかくの休みの日になんでそんなことするんだ、お前は俺をゆっくり休ませてくれないのか!」と怒鳴りつけます。
被害者は、掃除をするにもどうしたらよいか分からず、不安となります。
このようにして、モラハラ加害者は、被害者を自己の支配下に置いてきます。そして、被害者の人格を徹底的に否定します。
被害者の言動や考え方を否定し、「お前はだめな奴だ。」と思い知らせることで、被害者の自信を打ち砕き、心を痛めつけます。
このように、モラハラは見えない暴力という方法で、被害者をボロボロにしていくのです。
職場のモラハラの特徴
職場でも、モラハラは見られます。
モラハラ加害者は、被害者に対して、「頭がおかしい」「性格が悪い」など中傷したり、笑いものにしたりします。
また、被害者のちょっとしたミスを酷く責め立て、出来もしない要求をしたりします。
若しくは、仲間はずれにしたり、仕事の大切な情報を与えないこともあります。
これらは、パワハラ(パワーハラスメント)に似た側面を有しますが、モラハラは、パワハラ(上下関係)を背景とせず、同僚同士や場合によっては部下から上司に対しても行われます。
モラハラ加害者は、被害者に嫌がらせを繰り返し、被害者が怯える姿を見て、優越感や快感を得、支配欲を満たすのです。
そして、攻撃がエスカレートすると、被害者は心を病み、最悪の場合は自殺に至ることもあります。
モラハラの5つの問題点
モラハラには以下にご紹介する共通した問題点があります。
被害が深刻であること
モラハラは、殴る等の身体的な暴力と異なり、被害者の身体に怪我はありません。
しかし、心の傷はときとして、体の傷よりも深刻です。
特に、夫(妻)からのモラハラは、重症化することが多くあります。
家庭において、言葉の暴力に曝され続けると安らぐ場がなくなってしまいます。
被害者は、いつも加害者の言動に怯えながら生活しなければなりません。
そのため、心身に異常をきたし、最悪の場合は生命にかかわる危険もあります。
モラハラの症状について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

被害者自身に被害の意識がない
次の問題点は、モラハラ被害者は、自分自身が「被害を受けている」と実感していない場合があるということです。
これは、決して、辛い目にあっていないということではありません。
モラハラ被害は、1回だけではなく、継続的に加害者から攻撃を受けています。
長期間にわたって、人格を否定される言葉を受け続け、何も悪くないのに「自分が悪い」と思い込んでしまうことが多くあります。
このような洗脳状態にあるため、洗脳から目覚めるまで、「被害者」という意識がないことがあるのです。
周囲も気づかない場合がある
モラハラは、悪質な暴力ですが、ひとつひとつの言動は、それほど酷くないように見えることがあります。
例えば、「無視する」という行動は、悪質には見えない場合があります。
しかし、単に無視するだけではなく、威圧的な表情を組み合わせると、被害者にとってはとても怖く感じることがあります。
また、モラハラ加害者の特徴として、「外面が良い」という傾向があります。
例えば、妻に対しては高圧的でも、職場や親族に対しては、良い夫を演じるということが典型です。
DVと異なり、モラハラは、所得が高いビジネスマンなどにも多く見られます。
このような特徴があるため、被害者の方が周囲に相談しても、モラハラの被害をわかってくれないことが多々あるのです。
当事者同士での解決が難しい
モラハラ事案は他の一般的な離婚事案と比べて、当事者間での解決が難しいという傾向があります。
モラハラ被害者の多くは、相手に対して恐怖心を抱いている方が多くいます。
また、モラハラの被害者の中には、長年支配されていた影響で、「自分の力ではどうしようもない」と無力感を持っている方もいます。
このような特徴があるため、被害者の方が自分自身で加害者と交渉して問題を解決するということが難しい場合が多くあります。
裁判でのモラハラの立証は難しい
裁判では、基本的に、請求する側がその根拠となる事実を立証しなければなりません。
モラハラについても、相手が認めてくれれば、立証の必要はありませんが、モラハラ加害者は認めないことが多くあります。
これは、モラハラ加害者の傾向として、「自分が悪いことをしている」と自覚していないからです。
モラハラ加害者がモラハラの事実を認めてくれない場合、被害者の方でそれを立証しなければなりません。
しかし、モラハラは目に見えない暴力です。
DV(身体的暴力)の場合、怪我の写真や診断書などで立証することができますが、モラハラは心の傷について、写真を撮ることができません。また、医師に診断書を作成してもらうことも容易ではないでしょう。
そのため、モラハラについては立証が難しいのです。
モラハラで離婚できる?
モラハラの協議離婚
日本では、協議離婚が認められています。
したがって、モラハラ配偶者が離婚に応じてくれれば、離婚届を役場に提出することで、離婚を成立させることが可能です。
しかし、モラハラの場合、相手が離婚に応じてくれないことが多々あります。
それはモラハラ加害者にとって、被害者は無くてはならない存在だからです。
すなわち、モラハラ加害者は、被害者を攻撃することに依存して生活しています。
加害者は被害者に精神的な暴力を加えることで、自分自身の心身のバランスを保っているのです。
加害者は、心の支えでもある被害者がいなくなることを許容しません。
そのため、モラハラ事案においては、加害者が協議離婚に応じてくれないことが多々あるのです。
モラハラの裁判離婚
モラハラ事案で、相手が話し合いに応じてくれない場合、最終的には裁判となります。
では、裁判所はモラハラを理由として離婚判決を出してくれるでしょうか?
離婚について、民法は、次の5つの場合に限り、離婚を認めると規定しています(民法770条1項)。
この5つは「離婚原因」と呼ばれています。
- 相手方に不貞行為があったとき
- 相手方から悪意で遺棄されたとき
- 相手方の生死が3年以上明らかでないとき
- 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な理由があるとき
上記のうち、モラハラは「(5)その他婚姻を継続し難い重大な理由があるとき」に該当する可能性があります。
モラハラの程度が重大な場合や長期間継続している場合は、婚姻関係が破綻したと評価できると考えられます。
しかし、相手がモラハラの事実を否定した場合、被害者側が立証しなければなりません。
その場合、上記のとおり、立証は決して簡単ではないでしょう。
したがって、モラハラが理由での離婚裁判は難しい傾向にあります。
モラハラ夫と離婚する方法についてはこちらのページをご覧ください。

モラハラへの対処法
以上を前提として、モラハラへの対処法について、解説します。
モラハラを止めるのは難しいと自覚する
「モラハラを止めてもらうにはどうしたらいいですか?」
このような質問をよくお受けします。
ご夫婦の場合、被害者は加害者の悪いところだけでなく、いいところもたくさん知っています。
結婚前の優しかった相手のイメージが残っています。
そんな相手のことを思えば、いつかモラハラを止めてくれるはずと期待したくなります。
しかし、モラハラは、加害者の性格・属性から生じるものであり、止めさせることは非常に困難です。
あなたが相手に変わって欲しいと願っても、相手のモラハラは決して止むことはなく、むしろ、エスカレートしていくでしょう。
したがって、モラハラを止めさせる困難であることを前提とすべきです。
モラハラに対処するには別居が最適
モラハラを止めさせることが難しいことを前提とすると
モラハラへの一番の対応は、加害者と物理的な距離を保つこと、すなわち、別居することです。そして、まずは安全を確保します。
そのため、当事務所では、モラハラ被害者の別居をサポートするとともに、警察等の関係機関とも連携して安全確保を行なっています。
また、別居中、当然、生活費が必要となります。
そのため、別居サポートでは、婚姻費用と言って、別居期間中の生活費の支払いを、弁護士が相手に直接請求し、生活できるようサポートしています。
別居サポートについて、詳しくはこちらのページをご覧ください。
安全を確保できたら、落ち着いた状況でじっくり考えて、しばらく距離を置くだけにするか、若しくは離婚するかを決めます。
モラハラ相手の協議を弁護士に任せる
離婚を選択した場合、離婚の協議を始めなければなりません。
モラハラ被害者の方の多くは、自信を失くし、相手に対する恐怖感を持っています。そのため、相手に離婚を切り出すことも難しい状況です。
また、相手に離婚を切り出せたとしても、モラハラ加害者は聞き入れてくれないでしょう。
そこで、当事務所では、弁護士が依頼者の方に代わって直接相手と交渉する、代理交渉を行なっています。
被害者の方は、弁護士を窓口(代理人)とすることで、加害者と接触する必要がなくなるので大きな安心感を得ることができるでしょう。
まとめ
以上、モラハラについて、特徴や対処法を解説しましたがいかがだったでしょうか?
モラハラ被害は深刻であり、決して楽観的に考えてはいけません。
また、周囲の理解もないことが多いため、救済の必要性があるモラハラ被害者の方が多く存在します。
モラハラ被害が進むと、取り返しがつかない状況になることもあるため、早期に解決すべき問題です。
具体的に、どのような対応を行うべきかは、モラハラの内容や被害者の方の置かれた環境で異なります。
そのため、モラハラに精通した専門家のサポートを受けて進めていかれることをおすすめしています。
当事務所の離婚事件チームは、DVやモラハラ問題を強力にサポートしています。
ご相談の流れはこちらからどうぞ。
