保護命令とは?【弁護士が徹底解説】

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

保護命令とは、DV加害者からの暴力を防ぐために、被害者からの申立により、裁判所が加害者に対し、被害者に接近してはならないこと等を命ずる命令です。

DVで悩んでいます・・・

保護命令について教えてください

保護命令の却下を求めることは可能ですか?

デイライト法律事務所の離婚事件チームには、DV問題に関して、このようなご相談が多く寄せられています。

ここでは保護命令の内容、ポイント、対策などについて、離婚弁護士が詳しく解説いたします。

 

保護命令とは

保護命令とは、裁判所が出す命令ですが、具体的には加害者に対して被害者への付きまといを禁止したり、被害者の自宅から退去させる命令になります。

保護命令を出すためには、裁判所への申し立てが必要となります。

保護命令が認められると、警察から特別なサポートを受けることができるようになります。

また、命令に反した場合、加害者は刑罰を科せられますので、被害者の方の生活の安全を確保することが可能です。

以下、保護命令の具体的な内容等について解説いたします。

 

①接近禁止命令

おびえる女性これは、被害者の身辺へのつきまといや、被害者の住居、職場等でのはいかいを禁止する命令です。

命令が出されると、加害者は6か月間、被害者の身辺につきまとい、はいかいをしてはならなくなります。

 

②退去命令

これは、加害者を生活の本拠である自宅から立ち退かせる命令です。

命令が出されると、加害者は2か月間住居から退去し、その付近をはいかいしてはならなくなります。

 

③電話等禁止命令

これは、次の行為が禁止されます。

  • 面会の要求
  • 被害者の行動を監視していると思わせることを告げること
  • 無言電話をかけること
  • 緊急やむを得ない場合を除いて、連続して電話やFAX、メールをすること
  • 緊急やむを得ない場合を除いて、午後10時から午前6時までの間に電話やFAXをすること
  • 汚物や動物の死体等を送付すること

この命令は、①の接近禁止命令が発令されることが条件となっており、有効期間も接近禁止命令の有効期間が満了する日までです。

 

④被害者の子への接近禁止命令

これは、被害者の子の身辺につきまとい、またはその通常所在する場所の付近をはいかいすることが禁止される命令です。

この命令は、①の接近禁止命令が発令されることが条件となっており、有効期間も接近禁止命令の有効期間が満了する日までです。

 

⑤被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者への禁止命令

これは、被害者の親族や職場の上司等の身辺につきまとい、またはその通常所在する場所の付近をはいかいすることが禁止される命令です。

この命令は、①の接近禁止命令が発令されることが条件となっており、有効期間も接近禁止命令の有効期間が満了する日までです。

上記について、事案に即して選択して、申し立てることが必要です。

なお、当事務所は、DVに苦しむ被害者の方に対して、専門の弁護士が親身にサポートを行っています。

独りで悩まずにお気軽にご相談ください。

ご相談の流れはこちらからどうぞ。

 

保護命令に違反したら

保護命令に違反して、加害者が被害者に接近等した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第29条第1項)。

 

 

保護命令の手続の流れ

配偶者等へのDV

保護命令を申立てることができる者

①配偶者からの身体に対する暴力等を受けた者(注1)
②生活の本拠を共にする交際相手からの身体に対する暴力等を受けた者(注2)

警察、又は、配偶者暴力相談支援センターへの相談等

申立ての前に、警察ないし配偶者暴力相談支援センターに相談し、援助や保護を求めていることが必要。

又は、公証人面前宣誓供述書を作成して申立書に添付することが必要。

保護命令の申立て

保護命令は、被害者本人だけが申立人となる(親族や友人は申立て不可)。弁護士は代理人として申立てを行う。

管轄は相手方の住所地を管轄する地方裁判所。

審尋

申立人本人(弁護士がいれば代わりに出席可能)との面接(審尋という)が実施される。相手方からも事情を聴取する。

決定

裁判所は、保護命令又は申立てを却下する決定を下す。

平均的な審理期間は2週間程度。

 

注1:配偶者からの身体に対する暴力等を受けた者とは

身体に対する暴力だけではなく、生命又は身体に対する脅迫(害を加える旨を告知すること)も含まれます。
配偶者には、内縁関係も含まれます。
既に離婚している場合であっても、元配偶者から暴力等を受けるおそれがある場合も含まれます。

注2:生活の本拠を共にする交際相手からの身体に対する暴力等を受けた者とは

既に交際関係を解消している場合であっても、元交際相手から暴力等を受けるおそれがある場合は含まれます。
単なる交友関係に基づく共同生活等は除外されます。

 

 

保護命令のメリットとデメリット

保護命令を出してもらう側の3つのメリット

 

メリット①安心を得る

子供の手を引く保護命令を出してもらうことの最大のメリットは、「安心」です。

これまでDVを受けてきた方は、加害者に対して、極度の恐怖心を持っています。

保護命令は、加害者の行動の自由を制限するものです。

そして、この命令に違反した場合、上記の通り、刑罰が課せられます。

このように、保護命令はとても強い力をもっていることから、保護命令が発令されることで得られる安心感は大きいといえます。

 

メリット②離婚しやすくなる

離婚裁判において、離婚判決を出してもらうためには、法律で規定されている離婚の要件(これを「離婚原因」といいます。)について、主張立証しなければなりません。

ケースにもよりますが、保護命令が発令された事案であれば、相手配偶者によるDVがあったと認定される可能性が高くなると思われます。

DVがあったと認定されれば、離婚原因の一つである「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)があったとして、離婚判決が出される可能性があります。

また、離婚の方法には、裁判の他に、協議や調停という方法もありますが、この場合でも、保護命令が出されていると、相手が任意に離婚に応じてくれる可能性が高くなると思われます。

保護命令は、裁判所から発令される命令です。

加害者が修復を希望してても、接近等も出来ない状態となるので、修復を諦めてくれる場合があるからです。

したがって、裁判ではもちろん、それ以外の場合も、離婚しやすくなるといえるでしょう。

 

メリット③児童扶養手当の受給資格を得る

離婚後、子供を育てる親には、児童扶養手当の受給資格があります。

この手当は、「別居」だけでは受給資格はありません。

離婚を決意して別居しても、相手が離婚に応じてくれない場合、調停、裁判などを起こさなければならず、離婚まで長年月を要することがあります。

この期間、通常は児童扶養手当は受給できないという問題があります。

平成24年の法改正によって、児童扶養手当の受給要件として、「保護命令を受けたこと」が追加されました。

したがって、離婚成立前であっても、保護命令を出してもらうことで、児童扶養手当を受給できることが可能となっています。

児童扶養手当の支給額やくわしい条件について、くわしくはこちらのページを御覧ください。

 

 

保護命令を出される側の3つのデメリット

 

デメリット①行動の自由を奪われる

保護命令を出されると、配偶者に接近したり、電話をかけたりすることができなくなります。

また、自宅から退去しなければならなくなる場合もあります。

これは大きな負担となります。

 

デメリット②子供と会えない

配偶者に接触することが出来ないだけでなく、自分の子供にも会えなくなることが多くあります。

子供の成長は親にとって重大な関心事であり、これが奪われることは非常につらく感じるでしょう。

 

デメリット③精神的な負担

保護命令は、上記の通り、強力な制度です。

発令されると、加害者とはいえ、精神的な負担に感じるでしょう。

また、DVを行っていないなど、事実関係に争いがある場合、保護命令には到底納得出来ないでしょうから、大きなストレスを感じるでしょう。

 

 

精神的暴力に保護命令を出せる?

パワハラ保護命令の対象について、法律は次のように規定しています(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条1項前段)。

  • 配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)
  • 又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動

したがって、精神的暴力であっても、身体的暴力に準ずるような内容であれば、保護命令の対象となります。

精神的暴力の内容について、くわしくはこちらのページを御覧ください。

もっとも、精神的暴力の場合、身体的暴力の場合と比べて立証が難しいという問題があります。

言葉の暴力は、心の傷であり、身体に傷が残りません。

したがって、受信して診断書を取得したり、傷跡を写真で撮るなどして、証拠を作ることが難しいという特徴があります。

 

 

保護命令の却下を求めるには?

被害者が主張しているようなDVが存在しない場合、また、内容が大きく異なる場合、保護命令の却下を求めて争うことが可能です。

この場合、単に却下を求めるだけでなく、事実関係の認否を明らかにし、相手が提出している証拠資料について、矛盾点等を具体的に指摘して信用性を争うことがポイントとなります。

保護命令の審理は迅速に進むため、短期間で十分な反論を準備するのは大変ですが、できるだけ答弁書などの書面を提出して争うことが重要です。

なお、保護命令の答弁書のサンプルについては、こちらから無料でダウンロードが可能です。

 

 

保護命令と即時抗告

保護命令保護命令が認められた場合、不服を申し立てることが可能です。

この不服申立てのことを、「即時抗告」といいます。

通常、判決の場合、不服申立ての期間(控訴期間)は2週間ですが、保護命令の即時抗告は、告知を受けた日から1週間以内となっているので、注意が必要です。

なお、即時抗告を申し立てただけでは、保護命令の効力に影響を及ぼしません(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第16条2項)。

即時抗告があった場合において、保護命令の取消しの原因となることが明らかな事情があることにつき疎明があったときに限り、裁判所は、即時抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、保護命令の効力の停止を命ずることができます(同条3項)。

なお、即時抗告の申立書のサンプルについては、こちらから無料でダウンロードが可能です。

 

保護命令の弁護士費用

保護命令に関して、弁護士に依頼するとき費用が発生します。

保護命令に関する弁護士費用は、大きく分けて、次のものがあります。

  • DV被害者の方が保護命令を申立てる際に、弁護士に依頼するための費用
  • 保護命令を申し立てられた側が対応を弁護士に依頼するための費用

弁護士費用は、法律事務所によって異なりますので、ご相談の際に質問されるとよいでしょう。

弁護士バッジなお、当法律事務所にご依頼された場合の費用については、こちらからご覧ください。

 

 

保護命令の問題点

保護命令は、相手方の行動の自由を制限するものなので、その発令には法律の定める要件を満たさなければなりません。

そのため、申立書には、当該要件を満たす事実の記載が必要となります。

また、主張だけではなく、証拠も重要となります。

証拠の作成や提出方法については、専門的な知識や経験がある方が望ましいといえます。

したがって、保護命令の申立てにおいては、DV問題に精通した弁護士に相談し、助言を得ながら進めた方がよいでしょう。

 

 

保護命令のご相談の流れ

当事務所の離婚事件チームは、保護命令の申立てを強力にサポートしています。

ご相談の流れはこちらからどうぞ

 

 

「保護命令」についてよくある相談Q&A