モラハラ夫と離婚したい。どうすればいいですか?【弁護士が解説】

  
執筆者 弁護士 森内公彦
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  
保有資格 / 入国管理局申請取次者・3級ファイナンシャルプランナー


モラハラ被害が深刻な場合は、まずは弁護士にご相談された上で、別居して安心安全を確保することが重要です。

 

モラハラとは

モラハラとは、モラル・ハラスメントの略であり、精神的暴力、わかりやすく言えば、言葉や態度による「嫌がらせ」のことです。

モラハラの特徴は問題点について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

モラハラ被害が深刻な場合にまず検討すべきこと

別居を検討する

モラハラ加害者は、様々な手段を用いて被害者を自分の支配下に置き続けようとするため、あなた1人の力でモラハラ夫の支配下から逃れることは容易ではないでしょう。

モラハラに耐えられなくなったあなたが「もう離婚をしたい。」と要求すると、モラハラ夫は、「自分が悪かった。」「反省した。」「やり直したい。」といった優しい言葉を発したり、「お前はこの先1人で生きていけるのか。」「お前が離婚を希望するのだから、子どもは1人で育てろ。」「急に離婚したいと言い出すなんて浮気しているのか。」といったあなたを責め立てる言葉を投げかけたりしてくることが考えられます。

このような場合、長年モラハラ夫の支配下にあったあなたは、何度も裏切られたはずのモラハラ夫の甘い言葉を信じてしまうかもしれませんし、モラハラ夫への恐怖心からモラハラ夫からは何をしても逃れることはできないのだと思い込んでしまうかもしれません。

このように、すでにモラハラの被害を受けている被害者は、「自分を傷つける人間からは離れるべき」という当たり前の判断ができないような状況に追い込まれていることも少なくありません。

そして、モラハラ夫の支配下にいるうちは、容易に人に相談をすることもできず、またモラハラ夫が改心する可能性も極めて低いため、現状を改善することは困難でしょう。

まずは、別居を開始してモラハラ夫との物理的な距離を置くことが重要です。

 

弁護士を窓口にする

また、別居によって相手との接触を完全に断つ状況を作ることが重要です。

そのため、弁護士に相手との交渉を依頼し、今後の窓口となってもらうことをお勧めします。

弁護士は依頼を受けると、相手に受任通知を発出し、今後あなたとの直接の接触を禁止します。

これにより、相手からあなたに直接接触することは困難となります。

また、別居後、離婚が成立するまでは婚姻費用(生活費のこと)を請求する必要もあります。

この婚姻費用についても、弁護士から相手に請求してもらうとよいでしょう。

このようにして、相手と物理的な距離と保ち、安全を確保することで、以降は安心して離婚協議を進めていくことが可能となるでしょう。

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モラハラで離婚できる?

モラハラ事案で、相手が話し合いに応じてくれない場合、最終的には裁判となります。

では、裁判所はモラハラを理由として離婚判決を出してくれるでしょうか?

離婚について、民法は、次の5つの場合に限り、離婚を認めると規定しています(民法770条1項)。

引用元:民法|電子政府の総合窓口

この5つは「離婚原因」と呼ばれています。

離婚原因
  1. 相手方に不貞行為があったとき
  2. 相手方から悪意で遺棄されたとき
  3. 相手方の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な理由があるとき

上記のうち、モラハラは「5. その他婚姻を継続し難い重大な理由があるとき」に該当する可能性があります。

ただ、モラハラで問題なのは「証拠」です。

モラハラは目に見えない暴力です。

すなわち、身体的な暴力と異なり、体の表面上に傷はできません。

身体的なDVよりも証拠を残すことが難しいという傾向があります。

 

モラハラの証拠とは?

このようなモラハラの証拠としては、以下のようなものが考えられます。

証拠の具体例 立証する内容
録音データ 相手の暴言や誹謗中傷などの発言内容
LINEなどのメッセージ 相手の暴言や誹謗中傷などの発言内容
診断書やカルテ モラハラによって心の傷を被ったことやその程度

上記は一例です。

モラハラの具体的な内容やご状況によって証拠の内容は異なりますので、くわしくは専門家に相談されることをお勧めします。

 

 

モラハラ夫が離婚してくれない場合の対応法

離婚の基本的な方法には、①協議離婚、②調停離婚、③裁判離婚の3つがあります。

これらの簡単な特長とメリットやデメリットをまとめると下表のとおりとなります。

※一般的な傾向であり事案によって異なります。

協議離婚(当事者同士の話し合い)

メリット デメリット
  • 柔軟な解決の可能性がある
  • スピード解決の可能性
  • 負担が少ない
  • モラハラ相手とは協議が難しい

 

調停離婚(裁判所での話し合い)

メリット デメリット
  • モラハラ相手と直接顔を合わせる必要がない
  • 柔軟な解決の可能性がある
  • 時間がかかる
  • 負担が大きい
  • モラハラ相手が応じないと成立しない

 

裁判離婚(裁判所による命令)

メリット デメリット
  • モラハラ相手が応じなくても決着がつく
  • 柔軟性がない(※)
  • 時間がかかる
  • 負担が大きい

(※)柔軟性についての説明
裁判で判決となると、良くも悪くも裁判基準となります。
裁判基準で納得できない事案ではできるだけ避けるべきです。

 

弁護士による交渉

離婚問題の中でも、特にモラハラの事案では、弁護士に交渉してもらう方法をお勧めいたします。

裁判所を利用しないため、柔軟な解決の可能性やスピード解決の可能性を確保できます。

また、弁護士が相手と交渉するので、依頼者の精神的・肉体的な負担を大幅に軽減できます。

まずは弁護士が相手と直接交渉し、納得がいく解決が得られない場合に、次善の策として、調停手続の利用を検討するとよいでしょう。

 

モラハラ事案では離婚調停を申し立てるべきか

弁護士に交渉を依頼した場合であっても、相手が離婚に応じない場合、調停申し立てを検討しなければなりません。

以下、離婚調停を申し立てた場合の流れを図示します。

 

 

モラハラで離婚の慰謝料を請求できる?

身体的暴力の場合、それ自体が不法行為に該当し、その他の要件を満たせば慰謝料が認められます。

では、モラハラの場合はどうでしょうか。

モラハラは言葉による暴力であり、身体的暴力とは異なりますが、悪質な場合は慰謝料が認められるケースもあります

慰謝料が認められた判例

下記の裁判例は、夫の威圧的な態度によって婚姻関係が破綻したとして、150万円の慰謝料の支払いが認められたものです。

判例 東京地裁:平成14年(タ)第418号
「原告と被告との間の婚姻関係破綻の原因は,原告が,長年の間被告の威圧的な態度の下で常に恐怖感を抱いて生活をしていることに耐え切れなくなって,ついに破局に至ったものと認めることができるのであって,これまでの経緯を総合考慮すると,被告は,これにより原告が受けた精神的苦痛を慰藉すべきであり,その額は150万円が相当である。」  

裁判所は、夫のモラハラ的な対応として、例えば、下記の事実を認定しています。

  • 夫は妻に対して常々「俺が喰わせているんだ。お前一人では何もできない。」などと言っていた。
  • 夫は被告の「言動に対して突然怒鳴りだしたりするので、原告及び子供らは、常にびくびくし、家族中恐怖感を抱いていた。」
  • 夫が「車に家族を乗せて外出した際、他車とトラブルを起こし、相手の運転手に「そこでまってろてめえ、馬鹿野郎」などと口汚く罵りだした」そこで妻がなだめたところ、蛇行運転をしたり、急ブレーキをかけたりして妻や子供らを怖がらせたこともあった。
  • 長女が私立高校に行きたがっていたところ、夫は金がないといって大反対をしておきながら、その直ぐ後に新車を購入し、「お前が都立高校に行ってくれたからクラウンが買えた。」と言うなど、子供らに対する思いやりが全くなかった。

 

 

モラハラ離婚の弁護士の探し方

モラハラ問題でお困りの方が弁護士を探す場合、以下の方法を参考にされてください。

①モラハラに対する理解があること

モラハラ事案の特徴は、モラハラ被害が深刻であるということを理解してくれる専門家が少ないということです。

すなわち、モラハラは目に見えない暴力であることから世間一般的には軽視される傾向にあります。

しかし、モラハラは卑劣な行為であり、ときとして生命の危険もあるほど深刻な事態となります。

このようなモラハラの特殊性を理解している弁護士を見つけることが被害者救済のためには必須となります。

 

②離婚問題を専門としていること

モラハラの深刻さを理解してくれる弁護士を探すために、離婚問題を専門としていることが大きな指標となります。

離婚問題を専門としていれば、普段からモラハラ相談に対応しているため、共感してくれる可能性が高いと考えられるからです。

したがって、まずは離婚専門の弁護士であることが重要です。

専門性の有無については、インターネットで検索する方法をお勧めします。

離婚を専門としているか否かは、その弁護士のホームページを見ればわかるでしょう。

 

③書籍やメディア実績があること

専門性が高い弁護士であれば、離婚に関する専門書籍を執筆して出版されている場合があります。

また、離婚問題について、テレビ、新聞、雑誌などのメディアへの出演や掲載の実績があれば、世間的に専門家と認識されている可能性があります。

 

 

離婚後に嫌がらせがあったときの対応法

モラハラ事案の場合、相手に対する恐怖心があるため、離婚後のことも心配される方がいます。

離婚後、万一、相手から嫌がらせがあった場合、警察の生活安全課への相談、弁護士による警告書の送付などが考えられますが、どの方法が最適化は事案によります。

そのため、このような場合は、離婚をサポートしてくれた弁護士に連絡をとって見られてはいかがでしょうか。

一番状況を理解しているため、現状に即した最適な方法を提案してくれると思われます。

 

まとめ

以上、モラハラ夫との離婚問題について、詳しく解説しましたが、いかがだったでしょうか。

モラハラ夫と同居されている方は、毎日の生活が苦痛に感じられているかと思います。

別居を検討すること、モラハラの証拠を確保することなど独りでは対応できないことが山ほどあるでしょう。

不安に感じるようであれば、離婚専門の弁護士にご相談されてみてください。

この記事がモラハラ夫との離婚問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 

  
執筆者 弁護士 森内公彦
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士
保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者・3級ファイナンシャルプランナー




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