保護命令とは?手続きの流れやデメリット|弁護士が解説

  

保護命令とは、DVを防止するため、被害者の申立てにより、裁判所が加害者に対し、被害者に接近してはならないことなどを命じるものです。

ここでは、保護命令について、制度の概要や手続きの流れ、メリット・デメリットなどを解説していきます。

ぜひ参考になさってください。

保護命令とは?

保護命令とは、DVを防止するため、「被害者」の申立てにより、裁判所が加害者に対し、被害者に接近してはならないことなどを命じるものです。

根拠法令:e-Gov法令検索|配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律

※保護命令の根拠法令であるDV防止法(正式名称:配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)は、2023年に改正され、改正後の法律は2024年4月から施行されています。

この記事は、法改正に対応しています。

 

保護命令の6つの類型

保護命令には、次の6つの類型があります。

  1. ① 被害者への接近禁止命令
  2. ② 被害者への電話等禁止命令
  3. ③ 被害者の同居の子への接近禁止命令
  4. ④ 被害者の同居の子への電話等禁止命令
  5. ⑤ 被害者の親族等への接近禁止命令
  6. ⑥ 被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去命令

※②〜⑤は単独で発令されることはなく、①と同時又は①が発令されていることを条件に発令されます。

 

①被害者への接近禁止命令

被害者へのつきまといや、被害者の住居、勤務先等の近くをはいかいすることを1年間禁止する命令です。

 

②被害者への電話等禁止命令

被害者に対する次のいずれの行為も禁止する命令です。

  • 面会の要求
  • 行動を監視している旨の告知等
  • 著しく粗野又は乱暴な言動
  • 無言電話・緊急時以外の連続する電話・FAX・メール・SNS等の送信
  • 緊急時以外の夜間(午後10時~午前6時)の電話・FAX・メール・SNS等の送信
  • 汚物等の送付等
  • 名誉を害する事項の告知等
  • 性的羞恥心を害する事項の告知・物の送付・電磁的記録の送信等
  • 位置情報の無承諾取得

 

③被害者の同居の子への接近禁止命令

被害者と同居する未成年の子へのつきまといや、子の学校等の近くをはいかいすることを禁止する命令です。

 

④被害者の同居の子への電話等禁止命令

被害者と同居する未成年の子に対する次のいずれの行為も禁止する命令です。

  • 行動を監視している旨の告知
  • 著しく粗野又は乱暴な言動
  • 無言電話・緊急時以外の連続する電話・FAX・メール・SNS等の送信
  • 汚物等の送付等
  • 名誉を害する事項の告知等
  • 性的羞恥心を害する事項の告知・物の送付・電磁的記録の送信等
  • 位置情報の無承諾取得

 

⑤被害者の親族等への接近禁止命令

被害者の親族その他被害者と社会関係において密接な関係を有する者(被害者の友人や上司など)へのつきまといや、当該親族等の住居や勤務先近くをはいかいすることを禁止する命令です。

 

⑥被害者と共に生活の本拠としている住宅からの退去命令

配偶者に対し、被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去と、住居付近のはいかいの禁止を命令するものです。

期間は原則2か月です。

 

保護命令の申立てができる「被害者」とは?

保護命令は、「被害者」のみが申立てをすることができます。

そして、保護命令制度における「被害者」とは、次のような人を指すものとされています。

「配偶者から身体に対する暴力又は生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知してする脅迫を受けた者」

※退去命令の場合は、身体に対する暴力又は生命・身体に対する脅迫を受けた者に限られます。

「配偶者」とは、一般的には夫婦の一方(夫や妻)のことを指しますが、保護命令制度の上では次の人たちを含むとされています。

  • 配偶者(法律婚のみならず事実婚の場合も含まれる)
  • 生活の本拠を共にする交際相手(同棲している恋人のこと)
  • 元配偶者(離婚前から引き続き暴力を受ける場合)
  • 生活の本拠を共にする交際をしていた元交際相手(別れる前から引き続き暴力を受ける場合)

上記のような人たちから、身体に対する暴力や、生命、身体、自由、名誉、財産に対する脅迫を受けた人が、保護命令を申し立てることができる「被害者」ということになります。

 

命令違反には刑罰が科される

保護命令に違反した場合は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処されるとされています(第29条)。

参考:配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律

 

 

 

DVに対しては保護命令を検討する

DV被害を受け、命や心身に危険が及ぶ可能性がある場合は、保護命令の申立てを検討する必要があります。

活用例

事例

事例①
妻は、夫からの暴力から逃げるために別居した。
別居後、夫から「戻らないなら殺してやる」といったメールが何度も送られてきている。
→被害者への接近禁止命令+被害者への電話等禁止命令の申立てを検討
事例②
夫からの暴力から逃げるため、妻は7歳の子どもを連れて別居した。
夫が子どもの学校近くで待ち伏せするなどして子どもを連れ帰ってしまうことを阻止したい(そうなると妻が夫に会わざるを得なくなるため)。
→被害者への接近禁止命令+子への接近禁止命令の申立てを検討
事例③

妻は、夫からの暴力から逃げるために別居した。
別居後、夫が妻の勤務先に押しかけてきて、妻の上司に「妻を出せ」と怒鳴るなど、乱暴な言動を行っている。
→被害者への接近禁止命令+親族等への接近禁止命令の申立てを検討

事例④

妻は、夫からの暴力から逃げるために別居を考えているが、夫が家にいると身辺整理や引っ越し準備をすることができない。
→退去命令の申立てを検討

 

 

保護命令の流れと申立方法

保護命令の手続きの流れ

保護命令の手続きの流れ

 

 

申立ての準備

保護命令の申立書には、配偶者暴力相談支援センター又は警察に相談等を求めた事実の有無やその内容を記載する必要があります。

支援センターや警察に相談せずに申立てをする場合には、暴力を受けた状況などについて記載した書面を公証役場に持っていき、公証人の認証を受け、この認証を受けた書面を申立書に添付する必要があります。

したがって、保護命令の申立て前には、次のいずれかをする必要があります。

  • 支援センター又は警察に相談又は援助・保護を求める
    (対象の暴力について以前に相談したことがある場合は別途する必要はない)
  • 供述書を作成して公証人の認証を受ける

 

 

申立て

申立ては、申立書を作成し、その他の必要書類とともに管轄の裁判所に提出することにより行います。

保護命令を弁護士にご依頼される場合、その弁護士が申立書等を作成いたします。

管轄の裁判所は次のいずれかとなります(どれでもOK)。

  1. ① 相手方(加害者)の住所地を管轄する地方裁判所
  2. ② 申立人(被害者)の住所又は居所(避難先)の所在地を管轄する地方裁判所
  3. ③ 暴力等が行われた地を管轄する地方裁判所

申立書が受理されると、すぐに申立人側(被害者本人又は代理人の弁護士)が裁判所に呼び出され、裁判官との面接が行われ、暴力や危険性などについて詳しく聴取されます(裁判所により運用は異なります)。

 

口頭弁論又は審尋

保護命令は、原則としては、裁判官が相手方(加害者)から話を聴いてからでなければ発令できないものとされています。

そのため、申立てから大体1週間後くらいの日程で、相手方が裁判所に呼び出され、裁判官に話をする手続きが行われることになります(口頭弁論期日又は審尋期日)。

ただし、緊急を要する場合は、上記の手続きを経ずに発令できるものとされています。

また、相手方が呼び出しを受けたにもかかわらず期日に出頭しなかった場合は、相手方からの言い分を聴かずに決定が出されることになります。

 

決定

以上の手続きの結果や当事者からの提出書類などを踏まえ、裁判所が保護命令の発令(申立てを認める場合)又は、却下(申立てを認めない場合)の決定をします。

申立てから決定までにかかる時間は、大体2週間くらいです。

 

不服申立て

裁判所の決定に不服がある場合、保護命令が却下された申立人(被害者)又は保護命令を受けた相手方(加害者)は、1週間以内に高等裁判所に不服を申し立てることができます。

 

保護命令申立ての必要書類

保護命令の申立てに必要な書類は次のとおりです。

  • 申立書(2部)
  • 戸籍謄本・住民票
  • 証拠書類(2部)
    (ケガの写真、診断書、陳述書など)

【被害者の同居の子(15歳以上)への接近禁止命令等を申し立てる場合】

  • 子の同意書

【被害者の親族等への接近禁止命令を申し立てる場合】

  • 親族等の同意書

【支援センター・警察署に相談せずに申し立てる場合】

  • 公証役場で作成した宣誓供述書(2部)

 

保護命令申立書の記載事項

保護命令の申立書には、次のようなことを記載します。

  1. ① 暴力等(身体に対する暴力又は生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対する脅迫)を受けた状況
  2. ② 更なる身体に対する暴力等により、生命又は心身に重大な危害を受ける恐れが大きいという事情

【退去等命令を申し立てる場合】
更なる身体に対する暴力により、生命又は身体に重大な危害を受ける恐れが大きいという事情

  1. ③ 被害者の同居の子への接近禁止命令を申し立てる場合
    被害者がその子に関して配偶者等と面会を余儀なくされるという事情
  2. ④ 被害者の親族等への接近禁止命令を申し立てる場合
    被害者がその親族等に関して配偶者等と面会を余儀なくされるという事情
  3. ⑤ 配偶者暴力相談支援センター又は警察に相談等を求めた事実の有無やその内容

裁判所によっては、独自に申立書のひな形を用意しているところもあります。

また、当事務所では、以下のページで保護命令の申立書などDV関連書式のサンプルを紹介しています。

無料でダウンロードが可能ですので、ご参考にされてください。

もっとも、具体的な記載内容や必要書類は事案により異なりますので、サンプルはあくまでも参考程度にとどめ、詳しくはDVに強い弁護士に相談するようにしてください。

 

保護命令の申立てにかかる費用

保護命令の申立手数料は1,000円です。

1,000円分の収入印紙を裁判所に納めます。

また、郵送代として郵便切手をあらかじめ納める必要もあります。

必要な金額や切手の組み合わせなどは裁判所ごとに異なりますので、申立先の裁判所にお問い合わせください。

 

 

保護命令が認められないケース

保護命令は、次のような発令要件を満たさなければ認められません。

  1. ① 配偶者や同棲している恋人から身体に対する暴力や、生命・身体・自由・名誉・財産に対する脅迫を受けたこと(「被害者」による申立てであること)
  2. ② 更なる暴力により生命や心身に重大な危害を受ける恐れが大きいこと

②「重大な危害を受ける恐れが大きい」といえるかどうかについては、過去の暴力の頻度、態様、被害の程度などの事情に基づいて判断されます。

明確な基準はありませんが、例えば、最後に暴力を受けてから長期間が経過しているといった事情がある場合は、申立て直前まで暴力を受けていたようなケースと比較すると、②の要件を満たさないと判断される可能性が高くなると考えられます。

※この他、必要書類がそろっていない場合や、子が成人しているのに子への接近禁止命令を申し立てた場合など形式的な条件を満たしていない場合も認められません。

 

保護命令が却下される確率

法改正前のデータですが、2020年に終局した保護命令事件1,855件のうち、保護命令が発令された件数は1,465件(一部認容も含む)だったとのことです。

したがって、保護命令を申し立てても、約20%は認められていないということです(一部却下、取下げ、一部取下げ、移送・回付等の事案も含む)。

保護命令が却下される確率

参考:男女共同参画局|男女共同参画白書 令和3年度版

 

 

保護命令のメリット・デメリット

メリット デメリット
  • 安心を得ることができる
  • 離婚が認められやすくなる
  • 児童扶養手当の受給資格を得る
【被害者(申立人)側】

  • 全てのDVに対処できるわけではない
  • 安全が保障されるわけではない

【加害者(相手方)側】

  • 行動が制限される
  • 子どもとの面会に影響する恐れがある

 

保護命令のメリット

安心を得ることができる

保護命令が発令されれば、加害者は容易に被害者に近づくことができなくなります。

そのため、少なくとも保護命令が出ている期間は、暴力を防いで安全を確保することができます。

保護命令によって安全を確保することができれば、その後は安心して離婚の手続きや新しい生活の準備をすることができます。

 

離婚が認められやすくなる

裁判で離婚判決をもらうには、離婚原因(法律が規定する離婚が認められる条件のこと)が有ると認められる必要があります。

この点、DVは離婚原因のうちの「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)として考慮される可能性があります。

根拠法令:e-Gov法令検索|民法

そして、事案にもよりますが、保護命令が発令された場合は、DVの事実が認定される可能性が高くなります。

したがって、保護命令が出された場合は、離婚が認められやすくなる可能性があります。

また、裁判までに至らない場合でも、保護命令が出されたことにより、相手が関係修復を諦めて離婚に合意することもあります。

 

児童扶養手当の受給資格を得る

児童扶養手当とは、父又は母と生計を同じくしていない児童のための手当です。

保護命令が出された場合は、離婚前でも児童扶養手当を受給することができます。

 

保護命令のデメリット

被害者(申立人)側

全てのDVに対処できるわけではない

同棲していない恋人からの暴力や、脅迫を含まない嫌がらせのみを受けている場合は、保護命令の対象外となります。

 

安全が保障されるわけではない

保護命令の実効性は刑罰によって担保されてはいます。

しかし、加害者が刑罰を受けても構わないと考えて命令違反(被害者への接近など)をして、更なる暴力を振るう可能性はゼロではないため、保護命令によって完全に暴力を防止できるというわけではありません。

 

加害者(相手方)側

行動が制限される

保護命令が発令されれば、申立人への接近ができなくなったり、自宅から退去しなければいけなくなります。

 

子どもとの面会に影響する恐れがある

相手(保護命令の申立人)の元に子どもがいる場合は、保護命令が出されると、子どもと会うこと(「面会交流」といいます。)が難しくなる場合があります。

保護命令と面会交流は連動するものではありませんが、相手が「保護命令が発令されるような状態であること」などを理由に面会交流の実施を拒む可能性は高く、スムーズにいかないことが予想されます。

 

 

DVへの対処のポイント

安全確保を最優先に考える

状況にもよりますが、DV事案では、加害者と物理的な距離を置いて安全を確保することを最優先に考えるべきです。

危険性が高い場合は、支援センターに一時保護を求めたり、早期に保護命令を申し立てたりする必要がありますので、まずは支援センターや警察、専門の弁護士などにご相談ください。

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証拠を集める

保護命令の申立てや、離婚や慰謝料請求をする際には、DVの証拠を押さえることがポイントとなります。

DVの証拠としては次のようなものがあります。

  • 録音・録画
    DVが行われている状況を記録したもの
  • 写真
    DV直後の傷(身体)や壊された物の写真など
  • 診断書・カルテ
    DVによる負傷やメンタル不調に関するもの
  • メール・LINE等
    相手から送られてきたメッセージ、友人や家族にDVについて相談したやり取りなど
  • 日記・家計簿
    日常生活の様子がわかるもの(ただし、単独では証拠としての価値は低い)

具体的にどのような証拠をどのように集めたらよいかについては、DV問題に詳しい弁護士にご相談ください。

 

DVに強い弁護士に相談する

DVにお困りの場合は、DV問題に強い弁護士に相談されることをおすすめいたします。

法律相談では、法的な解決手段や解決までの道筋を知ることができます。

また、弁護士には、保護命令の申立てはもちろん、別居のサポート、別居後の生活費(婚姻費用)の請求や離婚手続きなどの法的手続きを依頼することができます。

そうすることで、負担を軽減しつつ、早期に、適切な解決をすることができるようになります。

 

保護命令についてのQ&A

保護命令が出されたらどうなる?

裁判所から警察に保護命令が出たことなどについて連絡がいき、警察から安全確保のためのサポートを受けることができます。

また、加害者が保護命令に違反した場合は、刑罰が科されます。

 

保護命令の目的は何ですか?

加害者からの暴力を防止して被害者の生命や心身を守ることです。

 

保護命令は、加害者を被害者から引き離して被害者の生命・心身に危険が及ぶのを防止することを目的としています。

被害者の子どもや親族等への接近禁止命令等も、被害者が加害者に面会せざるを得ない状況になるのを防いで被害者の生命・心身を守るためのものであり、子どもや親族等への危険を防止することを直接の目的とはしていません。

退去命令も、被害者が加害者と離れるための準備をするためのものであり、加害者を追い出して被害者の住居を確保するためのものではないとされています。

 

保護命令の発令要件は?

保護命令発令には、次のいずれも満たすことが必要になります。

 

  1. ① 配偶者や同棲している恋人から身体に対する暴力や、生命・身体・自由・名誉・財産に対する脅迫を受けたこと(「被害者」による申立てであること)
  2. ② 更なる暴力により生命や心身に重大な危害を受ける恐れが大きいこと

 

 

まとめ

以上、保護命令について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

DV問題への対処法は、DVの内容や被害状況などによって異なりますので、お困りの場合はまずはDV問題に詳しい弁護士にご相談ください。

保護命令の申立ての要否の判断も含め、個別具体的なアドバイスを受けることができます。

当事務所には、DV問題に注力する弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、DV問題にお困りの方を強力にサポートしています。

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