婚姻費用も支払わない暴力夫から金銭回収をした上で離婚できた事例

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

ご相談者Aさん (神奈川県)
30代女性
職業:専業主婦
世帯年収:1300万円
婚姻期間:10日で別居
解決までの期間:1年6ヶ月
解決方法:協議離婚
子どもあり (1歳)
離婚を切り出した

相手:30代会社員

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 利益
離婚 不成立 成立 成立
親権
養育費 0円 月額12万円支払う 月額12万円の増額
面会交流 自由に面会交流を行う
立会いなし
2ヶ月に1回
立会いあり
頻度の減少
立会いあり
財産分与
慰謝料 0円 50万円 50万円の増額
年金分割
婚姻費用 0円 月額22万円支払う
(+未払分約190万円)
月額22万円の増額
未払分約190万円の増額

状況

Aさんは、平成28年に夫と結婚をしましたが、入籍してわずか10日後に夫との別居を開始しました。

 

Aさんが夫との別居を開始した理由は、夫から身体的・経済的なDVを受けていたことが理由でした。

また、別居した約半年後に娘が生まれましたが、その後も夫と暮らすことはなく別居を続けていました。

夫は、Aさんが家を出て行った後、Aさんに対し謝罪の手紙を送ったり、娘のために使ってほしいと一定の預金が入った通帳を送ったりしていました。

しかしながら、Aさんとしては夫から受けた身体的・経済的DVを忘れることが出来ず、離婚の意思は変わりませんでした。

もっとも、夫は離婚に応じようとせず、Aさんの離婚の意思が固いと分かるや否や、送ってきた預金通帳の返却を求める等しており、Aさん自身では到底離婚の話合いを行うことはできませんでした。

そこで、Aさんは弊所の離婚専門弁護士に離婚の協議を依頼されました。

 

 

弁護士の関わり

Aさんから依頼を受けた弁護士は、まず、夫に対し離婚協議申入書を送付しました。

夫は、すぐに代理人を立ててきましたが、離婚にはやはり消極的であり、婚姻費用についても支払わない意向を示していました。

その後、交渉を重ねていくことで、何とか夫は離婚に前向きになってくれたものの、未払分の婚姻費用は支払おうとせず、養育費についても非常に低額の提示しかしてきませんでした。

そこで、このまま話合いを続けても埒が明かないと考えた弁護士は、Aさんと打合せをし、調停に移行することにしました。

調停移行後、夫は、第三者的立場である裁判所の意見も確認した上で、婚姻費用の未払分及び今後の毎月分の支払いについては同意をしてくれ、婚姻費用についてはすぐに調停が成立しました。

また、養育費についてもすぐに話合いがまとまりましたが、面会交流及びDVに対する慰謝料についてはなかなか話合いがまとまりませんでした。

しかしながら、面会交流については、弁護士立会いの下、弊所のキッズルームで面会交流を行ってみる等の方法をとることにより、頻度の減少や立会いの必要性についてなんとか相手方に納得をしてもらうことができました。

また、DVについては、具体的な証拠を提出することで、一定の金額については相手方も支払わざるを得ないと考えてもらえるようになりました。

最終的に、Aさんは、未払分も含めた婚姻費用全てを回収し、またDVの慰謝料や、今後の養育費もしっかり取決めをする等、きっちりと金銭的な回収・取決めをした上で離婚を成立させることができました。

 

 

補足

本件のメインの争点について解説します。

婚姻費用について

婚姻費用とは、婚姻共同生活を営む上で必要な一切の費用をいい、いわゆる生活費にあたります。

そして、婚姻費用の適正額は、夫婦双方の収入等を踏まえて算出されます。

本事例のように、妻が離婚をしたいと家を出て行った場合、夫が「妻が勝手に家を出て行ったのだから生活費は支払わない」と主張することが多々ありますが、このような場合でも婚姻費用の支払義務は発生し得ます。

しかしながら、過去の婚姻費用については、当然に支払われていない分の婚姻費用全額を請求できるというわけではありません。

裁判所が認めてくれるのは、婚姻費用の請求時以降、すなわち調停の申立てや内容証明郵便をもって婚姻費用の分担を求める意思を表明した時以降の婚姻費用の支払いであるため、しっかりと請求をしておかなければならないことに注意が必要です。

本事例では、弁護士が依頼を受けてすぐに夫に対し協議離婚申入書を送付し、その書面の中で婚姻費用の請求をしていたため、未払分の婚姻費用についてもきっちりと回収をすることができました。

 

慰謝料について

配偶者の不貞行為や暴力等について一定の慰謝料請求が認められることは周知の事実であり、本事例においても暴力等を理由として夫に対し慰謝料の請求をしています。

慰謝料額については、諸般の事情を考慮して裁判官が裁量により算定するため、明確な算定根拠はありません。

しかしながら、概ね①婚姻期間、②支払側の能力、③有責性、④未成年の子の有無等が離婚慰謝料の考慮要素となり、中でも婚姻期間の長さが慰謝料額に与える影響は大きいと考えられます。

本事例では、婚姻期間が1年未満と非常に短かったこと、また暴力の程度も大きくなかったことから、比較的低額である50万円で解決をすることになりました。

本事例のようなDV・モラハラ事例においては、当事者間に立場の優劣ができてしまっていることが多く、当事者間での解決は極めて困難です。

また、DV・モラハラの加害者は、婚姻費用を支払ってくれないことも珍しくありません。

そのため、DV・モラハラ事例において、本事例のようにしっかりと金銭的回収をしていくためには弁護士の介入が不可欠といっても過言ではないと思います。

 

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婚姻費用はいくらか?(https://www.daylight-law.jp/divorce/50008/)
慰謝料は発生するか?(https://www.daylight-law.jp/divorce/50006/)